物理学解体新書/携帯版


■有効数字■

実験には測定が伴う。


測定では、必ず目盛りを読んで測定値を知る。
ところが、テスターの針や、メスシリンダー内の水面等は、目盛りと目盛りの間になる場合が多い。


そこで測定値を読み取るときに「最小目盛りの1/10の値を目分量で読む」というルールを設ける。


もし最小目盛りが0.1Vであれば0.01Vまで、0. 01Vであれば0. 001Vまで読み取ることになる。
つまり、計測器の最小目盛りの精度が上がるほど、より精密な測定が可能になるということだ。


このルールを適用すると、目盛りをズバリ指している場合も、1/10の値まで読み取る必要がある。


例えば、2.4をズバリ指しているからと言って、「2.4」と読んではいけない。
1/10の値まで読むので「2.40」と読み取る。


このようにして読んだ「最小目盛りの1/10までの値」を「有効数字」という。


どんなに高精度の計測器を使用しても、真の値をズバリ読み取ることはできない。
無限に細かい目盛りは存在しないからだ。
だから「真の値は、最小目盛りの1/10の値の付近にいるはずだ」としか言えないのだ。
計測は真の値を読んでいるのではないのだ。


「有効数字」の最小桁は、目分量で読み取られた数値である。
従って、有効数字は「常に最小桁に不確かさが付きまとう数値」と認識しておく必要がある。
「有効」という言葉から、「有効数字は全桁が正確」といった印象を持つ人がいるが、それは誤りである。
最小目盛りの1/10の範囲で不確かさが含まれた数字なのだ。


繰り返すが、測定で真の値を知ることはできない。
しかし、目分量での読み取りが適切に行われていれば、真の値は最小目盛りの1/10の幅に入っていることになる。
例えば、有効数字が「67.4」であったとする。最小桁の「4」は目分量で得た値だ。
目分量の幅は1/10なので、真の値は67.35〜67.45の範囲に入っているはずだ。


有効数字が「67.4」であるということは、「67.35〜67.45の範囲」を代表して「67.4」と表現しているに過ぎない。
「67.4」という値そのものを指しているのではないのだ。


有効数字が決まれば、自然と「真の値はこの中に入っていますよ」という範囲が決まるのだ。
有効数字を見ることによって、値だけでなく、その値をどこまで信じていいのかが歴然とする。
真の値の範囲が分かるからだ。



計測するときは、「真の値」を読んでいるのではなく、「真の値がいるはずの範囲」を読んでいるという事実を意識しなくてはならない。


有効数字は単なる測定値ではなく、「どこまで信じていいのか」という範囲も含まれた表現なのだ。
測定中や、レポート制作中は、特に有効数字の意味を忘れてはならない。


今までは、主にテスターやメスシリンダーなどアナログの計測器を題材にしたが、測定値がそのまま表示されるデジタルテスターにも有効数字は適用される。
ただし、デジタルテスターには目分量がない。
デジタルテスターは表示全体が有効数字と見なしてよいだろう。
無論、本体や取扱説明書を読んで有効数字が何桁であるは把握する必要がある。
後述するが、有効数字に桁数が不明だと、測定値の計算処理ができない。


目盛りを読む視点によって、読み取り値が異なってくる。
これを視差という。
視差が生じないように読み取らなくてはならない。


視差なく正しく読み取るためには、目盛りに対して真正面から針を見る必要がある。


目盛り面に鏡があるメーターがある。このようなメーターでは、実物の針と鏡に写った針が重なるように読み取ると視差が生じない。
鏡が変形しているたり、曇っていると、読み取りの誤差になるのでこのようなメーターは使用できない。


また、計測器が熱的に安定していない場合は、ゼロ点が揺れる場合がある。
これをドリフトという。
ドリフトが生じるとデータの再現性が低下する。ドリフトがなく安定した状態で測定しなくてはならない。


視差やドリフトに注意しないと、測定値の不確かさが有効数字に収まらない。
視差やドリフトは測定値の信頼性に大きく影響を与えるので実験中は特に関心を持たねばならない事項だ。
言い換えると、これらが考察ネタになる。
測定誤差の要因として、ミラーの変形や曇りを列挙して、これらが、実験結果に影響したのか、していないのかを論じればいい。



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